「もえもえ」はさ、白あんにあまおういちごを練り込んで包んでから、和菓子“桃山”の製法で焼き上げるんよね。あまおういちごは地元産の完熟もんを探してきてからさ、自分でドライいちごを作りよると。11〜12時間くらい乾燥させるのがめんどうなんやけど、市販のドライいちごじゃこの味にならんとよねえ。!!
柳川市にある、絶対に絶やしたくない絶品グルメを集めた「絶メシリスト 柳川」。2018年のスタート以来、全19店がリストに名を連ねています。変わらず元気に営業されている店。はたまた事業継承によって次世代に引き継がれた店も存在しています。
店主もメニューも店構えも、なにかと個性豊かな柳川の絶メシたち。2024年の今、「最近、あの店にはどうやら変化があったらしい…」とのウワサを聞きつけて、絶メシ調査隊が3店に再訪してきました。
最初にお邪魔したのは絶メシリスト17に掲載の「廣松宝来堂」です。白黒のコントラストが映えるなまこ壁に、「誕生もち承ります」の筆文字が踊る外観。いつものように2代目店主の廣松澄人さんとその妹の祥子さんが迎えてくれました。
「いらっしゃい! 絶メシリストに載った後、TVの取材や遠方からのお客さんが来てくれてね。ちょっと前になまこ壁を新しくしとってよかった〜。あと厨房の壁もキレイにしたもんね」。
「あら、ほんとだ、屋根瓦もキレイになってますね〜。そしてお店の中の立派な梁や柱はご健在で! いぶし銀のかっこよさだなあ」と絶メシ調査隊は、店内をきょろきょろ。すると「この建物、私が生まれた年に完成したんよ。66年目やからね」と祥子さん。
続けて澄人さん、ご登場。「うちの目標は“現状維持”やけん。でもそれが一番難しかろう? そやから2022年には新商品の開発をすることにしたんよ」。そう言いながら作りたてを食べさせてくれたのが「筑後七国 水の国 もえもえ」というお菓子。なんと自家製のドライいちごを練り込んでいる渾身の一品です。
「もえもえ」はさ、白あんにあまおういちごを練り込んで包んでから、和菓子“桃山”の製法で焼き上げるんよね。あまおういちごは地元産の完熟もんを探してきてからさ、自分でドライいちごを作りよると。11〜12時間くらい乾燥させるのがめんどうなんやけど、市販のドライいちごじゃこの味にならんとよねえ。!!
さっそくいただくと餡に混ぜられたいちごの風味が濃い! ドライのはずですがジューシーささえ感じます。このときは焼き立てでほっくりさっくり。時間が立つとしっとりして、よりおいしくなるそうです。
「もえもえ」ってね、柳川の方言で「分け合う」の意味なんよ。みんなと分け合いながら一緒に楽しんでほしかけん、「もえもえ」って名前にしたと。じわじわ注文も増えてきているけど、もっともっと世の中に「もえもえ」を浸透させていくのが、これからの目標やね。
ちなみに澄人さんは今、福岡県の取り組み「ワンヘルス“One Health”〜人と動物の健康と環境の健全性は一つ」も応援されています。「ワンヘルスの焼印つくったけん、ぼちぼちワンヘルスまんじゅうも作らないかんね〜」と張り切っていらっしゃいました。
パソコンを使ってご自身で栄養成分値を計算したり、お菓子に貼るシールをデザインしたりもする澄人さん。そのマルチな才能とアイデアを武器に、お身体を大切にされながら、これからも頑張ってください!
絶メシ調査隊が次に向かったのは和洋中のメニューがそろう食堂「幸楽」。田んぼが広がるのどかなエリアにありながら、営業時間中の厨房はいつもフル回転。海苔や畑の仕事で忙しく、自炊する暇も惜しい地元のみなさんの昼ご飯をつくり続けてきました。
そんな幸楽は最近、テイクアウトを始められたとか。なにやら新しい動きがあるようです。
幸楽に到着したのは、まさにお昼時。お客さんは途切れず、今日もが熱気がこもっています。店主の古賀正孝さんが出てこられて「落ち着くまでお座敷で、ちゃんぽんでも食べて待っとって〜」。はい、遠慮なくそうさせていただきます。
ほどなく運ばれてきたちゃんぽんは、ああ、これこれ! 豚骨と鶏ガラのスープをまろやかかつ甘めに仕立てて、麺は太からず細からずでつるっと食べやすい。手切りにこだわる野菜はちょうどいいシャキシャキ感。すべてのバランスが良くて、相変わらず、うまい!
お待たせしました! 今日は忙しかった〜、ちゃんぽん80杯つくったよ。それに加えて丼ものやオムライスを注文してくれるお客さんが多かけん、ごはんが無くなってしもうて。新しく始めたお弁当も撮影してもらいたかったけどつくれなくって、ごめんなさいねー。
聞けばコロナ禍が落ち着いた今、周辺の市町村の方、旅行者の方など地元・柳川以外のお客さんも増え、お店の方がすっかり忙しくなってしまったとか。
「それまではちゃんぽん1杯でも出前をしていたんやけど、そこまで手がまわらんごとなりましてね。絶メシで発信してくれたおかげかもしれんね〜」とうれしいお言葉。
出前をしなくなった代わりにはじめたのがテイクアウト。ちゃんぽんをはじめとする店のメニューはすべてテイクアウトでき、とんかつ弁当、チキン竜田弁当、幕の内弁当など計5種の「幸楽弁当(予約制・3個から配達)」も新しく開発しました。
弁当のチラシはね、福岡で専門学校の先生ばしよる息子がデザインしたんですよ。なかなかよいでしょう。弁当づくりへ挑戦したのも、絶メシから刺激をもらえたのかもしれんね。これまでは注文を待っている守りの商売やったから。材料費の高騰などで大変な時もあるけれど「俺たちの店も伸びていかなん!絶やさんで行くぞ!」という意識をあらためて持つことができたよね。
奥さん、息子さんも一緒に、新スタイルの「幸楽」を切り盛りする日々。まだまだ挑戦を続ける「幸楽」を楽しみにしつつ、大好きなちゃんぽん、また食べに来ますね。
お腹もいっぱいになったところで最後の目的地である「古賀天ぷら屋」へ。絶メシ調査隊の「晩御飯のおかずを買って帰ろうか〜」の魂胆がみえみえのスケジュールなのですが、し、しまったー!
地元の食事情を支えている「古賀天ぷら屋」。14時過ぎに伺うと、商品はほぼない状態。一番天ぷらが揃っているのはオープン後すぐの10時くらいというのをすっかり失念していました。
ガラ〜ンとした売り場。店主の古賀巨人さんも、のれんの奥に引っ込んでしまわれていました。
悔しいので前回の取材で撮影した天ぷらでぱんぱんの景色も掲載させていただきます。確実に購入したい方は前日に電話予約をしておくのがおすすめです。ところで古賀さん、ここ5年で変わったことはありますか?
いちばん変わったのは天ぷらの価格ですね。材料のすりみの価格が2倍になってしまったもんで。また揚げ油も高くなりましたもんね。申し訳ないのですが値上げさせてもらっとります。
まる天は1枚15円が20円に、ごぼう天80円が90円になり、そのほかの商品も値上げされています。でも、すりみの価格そのまま2倍の値上げではありません。表から見えない厨房のなかで、すごい企業努力をされているのは容易に想像できます。
努力はしているのですが、スタッフも老朽化しておりまして〜。閉店時間を1時間早めて、17時までに変更しました。それも書いとってください。
そんなこんなもありながら「私が載っている絶メシのポスター、駅に貼られとったでしょう? あれを見て声をかけてくれるお客さんがいらっしゃいました」とのこと。さらに「Webで記事を見たのかなあ、音信不通になっていた親戚から電話がかかってきたんですよ。それまで連絡先も分からなくて。これはありがたかったです」。なんと、ご家族にとっては重大ニュース! 意外なところでお役に立ててうれしい絶メシ調査隊でした。
「古賀天ぷら屋」の天ぷらはやわらかく、ふんわりもっちりしています。この独自の食感にハマる人も多いハズ。特にまる天はシンプルなだけに、そのおいしさが際立っていました。まだ未食の方はぜひ!しつこいようですが午前中に行くか、予約がオススメです。
絶メシ5年経ちました記念として、前編・後編で振り返った今回のリポート。2度目の訪問を快く受け入れてくださった店主のみなさんばかりだったのがうれしい限りです。
気になる店やお気に入りの店があれば、あなたも今すぐ足を運んで欲しい。そして、絶品グルメを絶やすことのないよう、みんなで守っていきましょう!
絶メシ店によっては、日によって営業時間が前後したり、定休日以外もお休みしたりすることもございます。
そんな時でも温かく見守っていただき、また別の機会に足をお運びいただけますと幸いです。